「退職金でローンを完済すれば老後は安心」と考える人は少なくありません。しかし2025年現在、ファイナンシャルプランナーの多くは「退職金での安易な一括返済」に警鐘を鳴らしています。
特に残高1500万円を完済後、手元に500万円しか残らないケースでは、医療費や住宅修繕費などの突発的支出に対応できず、老後破産に直結するリスクが極めて高いのです。本記事では退職金一括返済に潜む3つの落とし穴と、正しい資金計画の立て方を詳しく解説します。
特に残高1500万円を完済後、手元に500万円しか残らないケースでは、医療費や住宅修繕費などの突発的支出に対応できず、老後破産に直結するリスクが極めて高いのです。本記事では退職金一括返済に潜む3つの落とし穴と、正しい資金計画の立て方を詳しく解説します。
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退職金一括返済が危険な理由
退職金での一括返済が危険とされる最大の理由は、手元資金の枯渇です。借金がゼロになることは精神的には安心ですが、現金がなければ老後生活は成り立ちません。人生100年時代において、65歳から100歳まで35年間の生活を支えるには、相当額の資金が必要です。年金だけでは不足する生活費、医療費、介護費、住宅修繕費などを全て貯蓄から賄わなければなりません。
退職金を全額返済に充ててしまうと、これらの支出に対応できなくなり、数年で資金が底をつく可能性が高まります。
落とし穴①:手元資金500万円では老後生活が成り立たない
退職金2000万円のうち1500万円を返済に充て、元の貯蓄500万円と合わせて手元に1000万円が残ったとします。一見十分に見えますが、実際には極めて不十分です。総務省の家計調査によれば、65歳以上の夫婦世帯の月平均支出は約26万円です。年金収入を月23万円と仮定すると、毎月3万円の赤字が発生し、年間36万円の貯蓄取り崩しが必要です。
手元資金1000万円の枯渇試算
– 月平均支出:26万円
– 年金収入:23万円
– 月間赤字:3万円
– 年間赤字:36万円
– 資金枯渇まで:約28年(医療費等を考慮せず)
しかしこれは医療費や住宅修繕費などの突発的支出を一切考慮していません。実際には10年から15年で資金が枯渇する可能性が高いのです。
– 月平均支出:26万円
– 年金収入:23万円
– 月間赤字:3万円
– 年間赤字:36万円
– 資金枯渇まで:約28年(医療費等を考慮せず)
落とし穴②:想定外の大型支出に対応できない
老後生活では予期せぬ大型支出が複数回発生します。住宅は築30年を超えると大規模修繕が必要になります。屋根や外壁の修理で300万円から500万円、給湯器やキッチンなど設備交換で100万円から200万円がかかります。持ち家である限り、これらの費用は避けられません。
医療費も深刻です。75歳以降は入院や手術のリスクが高まり、1回の入院で数十万円から数百万円の自己負担が発生します。がんなどの重病では治療費が年間100万円を超えることも珍しくありません。
介護が必要になった場合、施設入居で月15万円から30万円の費用がかかります。在宅介護でもリフォーム費用や介護用品で数百万円が必要です。
手元資金500万円から1000万円では、これらの支出に全く対応できません。
落とし穴③:インフレリスクへの対応力喪失
2025年現在、日本は緩やかなインフレ局面にあります。物価上昇率が年2%程度続けば、10年で貨幣価値は約20%目減りします。手元資金が少ない状態では、インフレによる実質的な購買力低下に対応できません。年金は物価スライドで調整されますが、その調整は遅れがちです。
インフレによる資産目減り例
– 手元資金:1000万円
– 年間インフレ率:2%
– 10年後の実質価値:約820万円
– 20年後の実質価値:約670万円
– 購買力の低下:約33%
借金をゼロにすることだけを優先し、手元資金を薄くしてしまうと、インフレ時代の老後生活に耐えられなくなります。
– 手元資金:1000万円
– 年間インフレ率:2%
– 10年後の実質価値:約820万円
– 20年後の実質価値:約670万円
– 購買力の低下:約33%
専門家が推奨する正しい退職金の使い方
ファイナンシャルプランナーが推奨する退職金の使い方は、「一括返済」ではなく「バランス配分」です。まず、退職金の全額を返済に充てるのではなく、一部を返済、一部を老後資金として確保します。例えば退職金2000万円のうち1000万円を返済に充て、残り1000万円を老後資金とします。
ローン残高は500万円となりますが、手元には元の貯蓄500万円と合わせて1500万円が残ります。残ったローンは再雇用の収入や年金で少しずつ返済していきます。
この方法なら、突発的な医療費や住宅修繕費にも対応でき、老後破産のリスクを大幅に軽減できます。
低金利ローンは急いで返すべきではない
現在の住宅ローン金利は歴史的な低水準です。固定金利でも1%前後、変動金利なら0.5%前後の商品も存在します。金利1%のローン残高1500万円の年間利息は約15万円です。一方、手元資金を投資に回せば年3%から5%のリターンが期待できます。1500万円を年3%で運用すれば年45万円の収益です。
つまり、低金利のローンを無理に返済するより、手元資金を確保して運用した方が、資産全体では有利になる可能性があります。
もちろん投資にはリスクがありますが、安全性の高い債券や配当株を中心に運用すれば、ローン金利を上回るリターンは十分に狙えます。
他の世帯の退職金活用事例
成功している世帯の多くは、退職金を複数の用途に分散配分しています。ある60代夫婦は、退職金2500万円のうち800万円をローン返済、1000万円を老後資金、700万円を資産運用に回しました。ローン残高は300万円となりましたが、手元資金は元の貯蓄と合わせて2000万円以上を確保できました。
別の世帯は、退職金での一括返済を見送り、再雇用で得た収入を全額返済に充てる戦略を取りました。65歳までの5年間で1000万円を返済し、退職金は全額老後資金として温存しました。
いずれのケースも、「完済」よりも「手元資金の確保」を優先しています。
よくある質問
Q1: 借金がある状態で老後を迎えるのは不安ですが?
A: 心理的には理解できますが、手元資金が枯渇する方が実質的なリスクは高いです。低金利ローンなら、無理に完済せず手元資金を確保する方が賢明です。
Q2: 退職金のどれくらいを返済に充てるべきですか?
A: 専門家は「退職金の半分以下」を推奨しています。残り半分は老後資金として確保し、医療費や住宅修繕費に備えるべきです。
Q3: 一括返済しないと金利がもったいなくないですか?
A: 現在の低金利(1%前後)なら、年間の利息は15万円程度です。手元資金を運用すればそれ以上のリターンが期待できます。
A: 心理的には理解できますが、手元資金が枯渇する方が実質的なリスクは高いです。低金利ローンなら、無理に完済せず手元資金を確保する方が賢明です。
Q2: 退職金のどれくらいを返済に充てるべきですか?
A: 専門家は「退職金の半分以下」を推奨しています。残り半分は老後資金として確保し、医療費や住宅修繕費に備えるべきです。
Q3: 一括返済しないと金利がもったいなくないですか?
A: 現在の低金利(1%前後)なら、年間の利息は15万円程度です。手元資金を運用すればそれ以上のリターンが期待できます。
まとめ
本記事の要点
– 退職金での一括返済は手元資金枯渇のリスクが極めて高い
– 手元資金500万円〜1000万円では医療費・住宅修繕費に対応不可
– インフレで実質的な購買力が低下し老後破産につながる
– 専門家推奨は「一括返済」ではなく「バランス配分」
– 低金利ローンは急いで返すより手元資金確保を優先すべき
– 退職金の半分以下を返済に充て、残りは老後資金として温存
– 退職金での一括返済は手元資金枯渇のリスクが極めて高い
– 手元資金500万円〜1000万円では医療費・住宅修繕費に対応不可
– インフレで実質的な購買力が低下し老後破産につながる
– 専門家推奨は「一括返済」ではなく「バランス配分」
– 低金利ローンは急いで返すより手元資金確保を優先すべき
– 退職金の半分以下を返済に充て、残りは老後資金として温存
