高知県では、一戸建て住宅の設計を担当した設計事務所の代表が、建築確認に必要な書類を偽造した疑いで逮捕されました。報道によると、偽造された確認申請書や確認済証が建築主や工事業者に提出され、施主は完了検査を受けられない状態に陥っていたとみられます。
新築住宅で完了検査が受けられない場合、単なる書類の不備ではなく、住宅ローン、将来の売買、増改築、行政手続きに影響が及ぶ可能性があります。特に、偽造された書類を受け取った施主は、誰に相談し、どの順番で対応すべきかが重要です。
この記事では、今回の逮捕の概要に加え、施主が確認すべき書類、検査を受け直せる可能性、住宅ローンへの影響、損害賠償を誰に請求できるかを整理します。
今回の問題・要点まとめ
- 高知県香美市の設計事務所代表が、建築確認関連書類を偽造した疑いで逮捕されました。
- 報道によると、偽造された確認申請書や確認済証が建築主や水道工事業者に提出されていたとされています。
- 施主側から「完了検査が受けられない」という相談が高知県に寄せられ、問題が判明しました。
- 確認済証や検査済証の真偽は、発行元の自治体・指定確認検査機関に確認番号などで問い合わせることができます。
- 偽造が事実であれば、設計者側への損害賠償請求や、建築士法に基づく行政処分の可能性が考えられます。
何が起きたのか
報道によると、高知県警は10月28日、高知県香美市土佐山田町に住む設計事務所代表の41歳の男を、私文書偽造・同行使などの疑いで逮捕しました。男は一戸建て住宅の設計を依頼されていたとされています。
捜査関係者などによる報道では、2025年11月17日、高知県建設技術公社に対し、住宅の設計が建築基準法に適合しているかを確認する「確認申請書」を、県の確認印が押された状態に偽造して提出した疑いがあるとされています。
さらに2026年4月1日には、建築主と水道工事業者に対し、確認印が押された確認申請書と、公社理事長名義の確認済証を偽造して提出した疑いがあると報じられています。2026年5月下旬に建築主の親族から「完了検査が受けられず困っている」という相談が県に寄せられ、調査につながりました。
確認済証と検査済証の違い
住宅を新築する場合、着工前に建築確認を受け、確認済証の交付を受ける必要があります。工事が完了したあとは、完了検査を受け、建築基準法に適合していれば検査済証が交付されます。
確認済証は「この計画で建ててよい」という確認、検査済証は「実際に建った建物が基準に適合している」という確認に近い役割です。今回のように確認済証の偽造が疑われる場合、完了検査の前提となる手続き自体に問題が生じる可能性があります。
補足:今回の逮捕はあくまで現時点の疑いに関する報道です。偽造の方法、関与した範囲、建物の適法性などについては、今後の捜査や行政の調査で明らかになる可能性があります。
施主が最初にすべきこと
偽造の被害に遭った可能性がある施主は、まず設計事務所や施工業者に問い合わせるだけでは不十分です。書類の真偽や建築確認の手続き状況は、発行元である自治体または指定確認検査機関が把握しています。
確認済証や検査済証に疑義がある場合は、書類裏面の問い合わせ先、または発行元の指定確認検査機関に連絡するよう、自治体は案内しています。確認番号や建築場所、建築主の情報などを伝え、手続きの記録があるかを確認しましょう。
確認の順番
- 1.建築確認の発行元を特定する:確認済証の発行元が市区町村か、指定確認検査機関かを確認します。
- 2.確認番号で照会する:確認番号、住所、建築主名、申請日などを伝え、確認済証が実際に交付されたかを確認します。
- 3.偽造の疑いを正式に申し出る:偽造の可能性があれば、自治体の建築担当窓口と警察に相談します。
- 4.書類とやり取りを保全する:契約書、見積書、請求書、メール、LINE、図面、偽造が疑われる書類は消さずに保管します。
- 5.弁護士に相談する:住宅ローン、工事代金、損害賠償、建物の是正にかかわるため、早めの法的助言が有効です。
| 書類・記録 | 確認すること |
|---|---|
| 確認済証 | 発行元、確認番号、押印、建築主名、建築場所が実在するか |
| 確認申請書 | 原本の有無、確認印、申請日、図面との整合性 |
| 工事請負契約書 | 設計・施工・監理の担当範囲と責任の所在 |
| 支払記録 | 設計料、工事代金、着手金、中間金の支払状況 |
| メール・LINE等 | 書類交付や完了検査に関する説明、依頼内容の記録 |
完了検査は受け直せるのか
完了検査を受けられるかどうかは、建物が建築基準法に適合しているか、必要な確認手続きが実際に行われているかによって変わります。確認申請が実際には行われていなかった場合、改めて正規の確認申請を行い、状況に応じて是正工事や手続きのやり直しが必要になる可能性があります。
一方で、実際に確認申請が受理されていたものの、交付された書類だけが偽造されていた、あるいは一部の手続きに不備があるといったケースでは、対応が異なる可能性があります。重要なのは、建物そのものの適法性と、書類手続きの不備を分けて確認することです。
是正が必要になる場合
建物が基準に適合していない場合は、階段、避難経路、防火性能、構造、敷地条件などの是正が必要になることがあります。是正工事には費用と時間がかかるため、誰が費用を負担するかが大きな争点になります。
設計者や施工者が、確認申請を実際に行わずに偽造書類を提出していたとすれば、施主は設計事務所や施工業者に対し、是正費用、追加費用、ローン利息、仮住まい費用などの損害賠償を検討できる可能性があります。ただし、契約内容、指示の有無、業者間の役割分担によって結論は変わります。
注意:偽造書類を使ったまま増改築や売買の手続きを進めると、後から更大的な問題になるおそれがあります。まずは自治体・指定確認検査機関で事実関係を確認し、自己判断で手続きを進めないことが大切です。
住宅ローンや売買への影響
検査済証は、公的融資、住宅の売買、増改築などの際に必要となる場合があります。完了検査が受けられない状態が続くと、住宅ローンの実行や借り換え、補助金の申請、将来の売却に支障が出る可能性があります。
すでにローンを実行している場合は、金融機関に「建築確認・完了検査に問題が生じた」「書類の偽造が疑われる」と事実を伝え、対応方針を確認することが重要です。未実行の場合は、完了検査や検査済証の取得見通し、契約上の解除や支払猶予の可否を確認する必要があります。
誰に損害賠償を請求するか
損害賠償の相手方は、契約関係と実際の関与によって変わります。設計業務を請け負った設計事務所、工事を請け負った施工業者、工事監理を担当した建築士などが対象になり得ます。
報道内容が事実であれば、書類を偽造して提出した設計事務所代表に対する責任追及が中心になると考えられます。ただし、施工業者が偽造を知りながら工事を進めたのか、確認義務を果たしていたのかなども争点になるため、契約書とやり取りの記録をもとに弁護士へ相談することが重要です。
よくある質問(FAQ)
Q1.自分の確認済証が本物かどうかは、どう確かめられますか?
確認済証の発行元である自治体または指定確認検査機関に、確認番号や建築場所などを伝えて照会できます。書類に疑義がある場合は、裏面の問い合わせ先や発行元へ連絡するよう案内されています。
Q2.完了検査は受け直せますか?
建物や手続きの状況によって異なります。正規の確認申請が行われていない場合は、改めて申請し、必要に応じて是正工事や手続きのやり直しが必要になる可能性があります。まず自治体や指定確認検査機関に相談してください。
Q3.住宅ローンはどうなりますか?
検査済証がないと、融資実行、借り換え、補助金申請、売買などに影響する場合があります。すでに実行済みか、未実行かで対応が異なるため、金融機関へ状況を伝え、弁護士にも相談することが望ましいです。
Q4.損害賠償は誰に請求できますか?
偽造や説明義務違反に関与した設計事務所、施工業者、監理者などが対象になり得ます。ただし、契約内容や役割分担によって異なるため、証拠を保全したうえで弁護士に相談してください。
まとめ
今回の問題は、設計事務所代表による書類偽造の疑いにより、施主が完了検査を受けられない状態に陥ったとされる事案です。施主にとっては、住宅ローン、将来の売買、増改築など、住まいの価値と生活設計に直結する問題です。
まずは確認済証の真偽を発行元に照会し、偽造の疑いがあれば自治体・警察・弁護士に相談することが重要です。そのうえで、建物の是正の必要性、完了検査を受け直せるか、損害賠償の相手方を整理していく必要があります。
家を建てる人は、専門家に手続きを任せて安心しているはずです。だからこそ、確認済証や検査済証の原本を受け取り、保管することが、施主自身を守る最後の砦になります。
書類の偽造は、見た目だけでは分からない場合もあります。疑問を感じたときに「大丈夫だろう」と放置せず、発行元へ確認する習慣が重要です。
住宅は、家族の生活の土台です。手続きの不備が明らかになったときこそ、感情的に責めるだけでなく、記録を残し、専門家と一緒に回復の道筋を探すことが大切です。
今後は、設計者・施工者・施主のそれぞれが、確認済証と検査済証の原本確認をより厳格に行う必要があります。今回の事案は、その確認の重要性を改めて示すものといえます。
