中国ビットコイン女王有罪で1兆円超押収、英中対立の行方は?

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2014年から2017年にかけて中国で12万人超から資金を集めた大規模投資詐欺事件が、英国で決着を迎えようとしています。

「中国のビットコイン女王」と呼ばれた被告が有罪を認め、押収されたビットコインは時価1兆円超という世界史上最大規模の暗号資産押収事件となっています。

しかし、この巨額資金の所有権をめぐり、英国政府と中国政府が対立。被害者たちは中国の厳しい暗号資産規制により名乗り出ることすらできない状況です。

なぜこれほどの規模の詐欺が可能だったのでしょうか。そして1兆円超の資金は最終的に誰のものになるのでしょうか。あなたも暗号資産を巡る国際的な法的問題に関心を持ったことはありませんか。

目次

事件・不祥事の概要(何が起きたか)

2025年9月29日、ロンドンのサザーク刑事法院で、中国人女性被告(47歳)が暗号資産を使った犯罪収益移転の罪で有罪を認めました。被告は2014年から2017年にかけて、中国国内で最大300%もの利回りを約束する投資商品を販売し、12万8000人以上から巨額の資金をだまし取っていました。

詐欺で得た資金の一部をビットコインに換えて英国に逃亡した被告は、偽造書類を使って入国。英国内でマネーロンダリング(資金洗浄)を繰り返していましたが、2024年4月に逮捕されました。これまでに6万1000ビットコインが押収され、ビットコイン価格の高騰により、その時価は76億2500万ドル(約1兆1650億円)に達しています。

さらに9月30日には、「執事」と呼ばれた共犯者(46歳)も同刑事法院で有罪を認めました。2人の量刑審理は2025年11月10日に予定されており、判決が注目されています。

📌 事件の要点

  • 被害総額:400億元(約8600億円)
  • 被害者数:12万8000人以上
  • 押収ビットコイン:6万1000BTC(約1兆1650億円相当)
  • 犯行期間:2014年〜2017年
  • 主犯の有罪認定:2025年9月29日
  • 量刑審理予定:2025年11月10日
  • 共犯者判決:禁錮6年8ヶ月(2024年5月)

発生の背景・原因

この大規模詐欺事件の背景には、中国における投資ブームと暗号資産への関心の高まりがありました。被告は「富の女神」と呼ばれ、友人や家族の紹介ネットワークを通じて、50歳から75歳までの企業経営者、銀行員、司法関係者といった社会的地位の高い層をターゲットにしていました。

被害者たちは数十万元から数千万元(日本円で数百万円から数億円)という巨額を投資。高利回りの約束と口コミによる信頼が、被害を拡大させる要因となりました。被告はだまし取った400億元のうち、11億元(約236億円)をビットコインに換えて資産を隠匿しました。

中国では当時から暗号資産取引に対する規制が厳しく、こうした資金移動は違法性が高いものでしたが、ビットコインの匿名性と国際送金の容易さが犯罪者にとって格好の逃亡手段となったのです。被告は偽造書類を使って英国に入国し、長年にわたり逃亡生活を続けていました。

関係者の動向・コメント

主犯の被告とともに、「執事」と呼ばれた共犯者(46歳)も2025年9月30日に有罪を認めました。この人物は暗号資産の管理や被告の逃亡を手助けしていたとされています。両名の有罪答弁は、12週間にわたる裁判が始まる前夜に行われました。

さらに注目すべきは、英国でマネーロンダリングを手伝った別の共犯者の存在です。この人物は2007年に配偶者ビザで英国に移住したシングルマザーで、中華料理ファーストフード店で働く年収5979ポンド(約122万円)の貧困層でした。しかし被告と出会ってから生活は一変します。

高級車メルセデス・ベンツを購入し、高級百貨店ハロッズで月3万ポンド(約612万円)の買い物を楽しむようになりました。家賃1万7000ポンドの6ベッドルーム豪邸に引っ越し、息子を一学期6000ポンドもする名門学校に通わせるなど、贅沢三昧の日々を満喫していました。この共犯者は2024年5月に禁錮6年8月の有罪判決を受け、約312万ポンドを差し押さえられています。2025年1月には、裁判官が3ヶ月以内に300万ポンド以上を支払うよう命じ、従わない場合はさらに7年の禁錮刑が科される可能性があります。

被告の弁護人は「暗号資産の価値が大幅に上昇しているため、被害者の損失を支払うのに十分な資金が残っている」とコメントしています。英国セキュリティ大臣は「この有罪判決は、英国が犯罪者にとって安全な避難場所ではないという明確なシグナルを送るものだ」と述べています。

被害状況や金額・人数

被害の規模は前例のないレベルに達しています。12万8000人以上という被害者数は、単一の投資詐欺事件としては世界でも最大級です。被害総額は400億元(約8600億円)に上り、被害者一人当たりの平均被害額は約670万円となります。

ただし実際には、被害額には大きなばらつきがあり、数百万円程度の被害者から、数億円を失った富裕層まで幅広く存在します。被害者の多くは社会的地位の高い中高年層で、老後資金や事業資金を投資していたケースも多く、経済的ダメージは深刻です。

押収された6万1000ビットコインの現在価値は約1兆1650億円に達しており、被害総額を大きく上回っています。これはビットコイン価格が事件発生当時から大幅に上昇したためです。理論的には被害者全員に損失を補填してもなお余剰が出る計算になります。しかし、後述する法的問題により、被害者への実際の返還は極めて困難な状況です。

行政・警察・企業の対応

英国警察は2018年に家宅捜索を実施し、ハムステッド・ヒース地区の豪邸から6万1000ビットコインが保管されたウォレットを発見しました。しかしウォレットの解析には3年もの歳月を要し、ようやく2021年に内容が明らかになりました。これは暗号資産犯罪捜査の技術的困難さを示しています。

事件のきっかけは、被告の協力者が2300万ポンド(約47億円)もする邸宅を購入しようとした際、マネーロンダリングの監視システムに引っ掛かったことでした。英国の金融監視当局は不審な大口取引を厳しく監視しており、この仕組みが機能した形です。

ロンドン警視庁は、ダービーシャーを拠点とする協力者を監視する中で、被告がスコットランドに潜伏していることを突き止め、その後ヨークで発見しました。2024年4月の逮捕時には、暗号化デバイス、現金、金、さらなる暗号資産が押収されています。2025年7月時点でも、捜査当局は押収資産の全容把握を続けています。

現在、押収資産の所有権をめぐって複雑な法的手続きが進行中です。英国検察当局は、没収手続きと民事訴訟を進めており、押収資産が犯罪者の手に戻らないようにする措置を講じています。英国財務省は裁判所の判断次第で、このビットコインを売却して国家財政に組み入れることができます。英国政府は約500億ポンド(約10兆2000億円)の財政赤字を抱えており、この資金は貴重な財源となる可能性があります。

一方、中国政府は「被害者の資金」として資産の返還を要求しています。しかし中国では暗号資産取引が厳しく規制されているため、被害者が公式に名乗り出ることは大きな法的リスクを伴います。このジレンマが問題をさらに複雑にしています。

専門家の見解や分析

国際金融犯罪の専門家は、この事件が暗号資産を利用した犯罪の典型例だと指摘しています。ビットコインの匿名性と国境を越えた送金の容易さが、犯罪者にとって理想的な資金隠匿手段となっているのです。

また法律専門家は、押収資産の帰属をめぐる問題が極めて複雑だと分析しています。英国法では、裁判所が「犯罪収益」と判断すれば国家が売却できますが、「被害資産」と見なされれば被害者への返還が原則となります。

しかし中国の暗号資産規制により、被害者が正式に返還請求することは事実上不可能な状況です。このため最終的には英国政府が売却して国庫に納める可能性が高いと見られています。この場合、被害者は一切の補償を受けられないまま終わる可能性があります。

暗号資産の専門家は、ビットコイン価格の高騰により押収資産の価値が被害総額を上回ったことは極めて異例だと述べています。通常、犯罪収益の押収では資産価値の減少や散逸により、被害者への全額補償は困難なケースがほとんどです。今回は皮肉にも、暗号資産の価格上昇が被害者救済の可能性を生み出しています。

刑事法の専門家は、量刑審理で被告がどの程度の刑期を科されるかに注目しています。暗号資産を使った犯罪収益移転という罪状では、英国では最大で14年の禁錮刑が科される可能性があります。被害の規模と金額の大きさ、そして長期にわたる逃亡を考慮すれば、重い刑罰が予想されます。

SNS・世間の反応

この事件はSNS上で大きな反響を呼んでいます。特に押収資産が1兆円を超えるという規模の大きさに、多くの人が驚きの声を上げています。

「12万人も騙されるなんて信じられない」「なぜこんな高利回りを信じてしまうのか」という被害者への疑問の声がある一方で、「高齢者を狙った卑劣な犯罪」「組織的な詐欺の恐ろしさ」といった批判も多く見られます。

また「1兆円を英国が取るのはおかしい」「被害者に返すべきだ」という意見と、「中国の規制が被害者を二重に苦しめている」「暗号資産規制の矛盾」を指摘する声も上がっています。被害者が名乗り出られないという状況に対して、多くのユーザーが同情と批判の両方を表明しています。

国際問題に関心を持つユーザーからは「英中の外交問題に発展する可能性」「国家間の資産争いの先例になる」といった分析も投稿されています。ビットコイン価格の高騰により資産価値が膨れ上がったことについても、「暗号資産バブルの象徴」「偶然の幸運か皮肉か」など様々な見方が示されています。

「貧しいシングルマザーが突然豪華な生活を始めたら怪しむべき」「マネロン監視システムがよく機能した」といった犯罪防止の観点からのコメントも見られます。

今後の見通し・影響

被告と共犯者の量刑審理は2025年11月10日に予定されており、2日間にわたる審理が行われる見込みです。暗号資産を使った犯罪収益移転という罪状では、英国では最大で14年の禁錮刑が科される可能性があります。既に有罪判決を受けた別の共犯者が禁錮6年8月だったことを考えると、主犯である被告にはより重い刑罰が科される可能性が高いでしょう。

押収資産の帰属問題は長期化する見込みです。英国裁判所が最終的な判断を下すまでには、さらに数年を要する可能性があります。被害者への補償手続きも2025年11月に予定されていますが、中国の暗号資産規制により、実際の返還は極めて困難な状況です。

中国政府は外交ルートを通じて返還を要求し続けるとみられますが、両国の法制度の違いや暗号資産に対する規制の相違が、解決を困難にしています。この事件は国際的な資産返還をめぐる前例となる可能性があり、今後の同様のケースに影響を与えるでしょう。

この事件は国際的な暗号資産犯罪対策にも影響を与えるでしょう。各国の金融当局は、暗号資産を使ったマネーロンダリングの監視を強化する方針です。特に大口取引や不審な資金移動に対する監視システムの整備が急がれています。

また被害者保護の観点からも、国際的な協力体制の構築が求められています。暗号資産犯罪では資金が国境を越えて移動するため、単一国家での対応には限界があります。被害者への補償制度や、押収資産の国際的な分配ルールの整備が今後の課題となるでしょう。この事件は、暗号資産時代における国際司法協力の在り方を問う重要な試金石となっています。

FAQ(よくある質問)

Q1: なぜ被害者は名乗り出られないのですか?

A: 中国では暗号資産取引が厳しく規制されており、投資詐欺の被害を申告することで、自身も暗号資産関連の違法行為に関与していたと見なされるリスクがあるためです。このため被害者の多くは沈黙を余儀なくされています。

Q2: 押収された1兆円は最終的に誰のものになりますか?

A: 英国の裁判所が「犯罪収益」と判断すれば英国政府のものとなり、「被害資産」と認定されれば被害者への返還が原則です。しかし被害者が名乗り出られない状況から、英国政府が売却して国庫に納める可能性が高いと見られています。

Q3: なぜビットコインの価値がこれほど上昇したのですか?

A: 押収された2018年から2025年まで約7年間で、ビットコイン価格は大幅に上昇しました。機関投資家の参入や、ビットコインETFの承認などにより需要が増加し、史上最高値を更新したためです。

Q4: この事件から学べる教訓は何ですか?

A: 高利回りを約束する投資商品には十分な注意が必要です。特に年率数十%を超えるような利回りは現実的ではなく、詐欺の可能性が高いと考えるべきです。また投資は必ず正規の金融機関を通じて行うことが重要です。

Q5: 主犯の量刑はいつ明らかになりますか?

A: 量刑審理は2025年11月10日に予定されており、2日間にわたる審理が行われます。暗号資産を使った犯罪収益移転では最大14年の禁錮刑が科される可能性があり、被害の規模から重い刑罰が予想されます。

まとめ

中国のビットコイン女王による投資詐欺事件は、12万人超から総額約8600億円をだまし取った史上最大級の暗号資産犯罪です。押収された6万1000ビットコインは時価1兆1650億円に達し、世界最大の暗号資産押収事件となりました。

主犯被告は2025年9月に有罪を認め、11月10日の量刑審理を待っています。しかし押収資産の帰属をめぐって英国政府と中国政府が対立しています。中国の厳しい暗号資産規制により被害者は名乗り出ることができず、最終的には英国政府が資産を国庫に納める可能性が高いと見られています。

この事件は、暗号資産を利用した国際犯罪の複雑さと、被害者保護の難しさを浮き彫りにしました。各国の法制度の違いや暗号資産規制の相違が、問題解決をさらに困難にしています。今後は国際的な協力体制の構築と、被害者救済のための制度整備が急務となるでしょう。

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