日本とインドが、2008年の「安全保障協力に関する共同宣言」を初めて改定します。焦点は、経済安保・重要鉱物の供給網、AIや半導体、防衛産業、そしてサイバー防衛。インド太平洋のパワーバランスが揺れる今、両国は“実装フェーズ”に踏み込みます。
背景には、対中リスクの高まりとサプライチェーンの再設計、さらには海洋秩序を巡る緊張があります。7月にはクアッド(日本・米国・豪州・インド)が海洋安全保障と重要鉱物での連携強化を打ち出し、各国の政策・法整備も加速中です。
本稿では、改定のポイントを「物語→データ→対策」の順で整理。5分で“何が変わるのか”“何に備えるべきか”がわかります。
- 物語的要素:8月29日、東京で首脳会談。改定文書を交換へ
- 事実データ:ACSA運用・Quad鉱物協力・日本の経済安保法など
- 問題の構造:対中依存と海洋秩序、サイバー脅威が結節
- 解決策:重要鉱物・半導体の共同調達/開発、産官学のR&D回路化
- 未来への示唆:データ/AIガバナンスやCBRN防護まで連携が拡張
2025年8月29日に何が起きるのか?
インドのモディ首相が29日に来日し、石破首相と首脳会談。2008年の共同宣言を初改定し、経済安保・防衛産業・サイバー等の新分野を明記した文書を交換する見通しです。読売の報道では化学・生物兵器への防御協力にも触れるとされます。
日付 | 動き | 根拠 |
---|---|---|
2008年 | 日印「安保共同宣言」署名 | 日本外務省(原文) |
2020年9月→2021年7月 | 日印ACSA(物品役務相互提供協定)署名→発効 | 日本外務省(発効発表) |
2024年8月20日 | 第3回「2+2」で“2008宣言の改定方針”を共同発表 | インド外務省共同声明 |
2025年7月1日 | Quadが海洋・重要鉱物連携を強化 | 米国務省/AP報道 |
2025年8月29日(予定) | 東京で首脳会談、改定文書を交換 | 朝日新聞AJW/読売報道 |
すべては2008年の共同宣言から始まった
2008年の宣言は、外交・防衛・海上保安分野の協力を骨格化。その後、ACSA締結・発効で実動面の連携が進み、海空の補給や共同訓練がスムーズになりました。2024年の「2+2」では、当時にない課題(重要鉱物、サイバー、AI等)へ適合させるための改定方針が明示され、今回の首脳会談で“初の本格改定”に至ります。
数字が示す「経済安保アップデート」の必然
指標/出来事 | 要点 | 示唆 |
---|---|---|
Quad「重要鉱物」協力(2025/7) | 海洋安全保障と同時にレアアース等の供給網強化を合意 | 対中依存低減の多国間フレームが稼働 |
日本の経済安保情報保全法(2025/5施行) | 政府・民間の取扱者にセキュリティクリアランス制度を導入 | 日印の機微情報共有の前提整備が進む |
インド半導体ミッション(2025/8時点) | 政府発表:承認案件が拡大、設計・製造の裾野形成を加速 | 日系の装置・素材・人材協力の余地が拡大 |
AI/デジタル協力(2025/8) | AI協力イニシアチブや「Digital Partnership 2.0」を準備 | データ/AIガバナンスと産学R&Dの接続点が増える |
なぜ日印の連携だけが突出して重要になるのか?
- 地政学:南シナ海~インド洋の海上交通路(SLOC)を俯瞰する二極
- 供給網:重要鉱物・半導体・先端部材の「複線化」需要
- 規範:法の支配に基づく海洋秩序と経済安保ルールの接合
- 技術:AI・サイバー・宇宙等「新領域」での共同R&Dと相互運用性
「今回の改定は“宣言から実装”への転換点。補給・演習を担保するACSA運用と、重要鉱物や半導体を核にした経済安保の接続が、抑止と繁栄の両輪を強化する」
※一般的見解の要約
SNS拡散とサイバー攻撃が生んだ新たな脅威
偽情報対策から重要インフラのサイバー防護、衛星・宇宙領域のシグナル妨害まで、攻防は複層化。AI時代の「攻めと守り」を両輪で設計することが、自由で開かれたインド太平洋の前提となります。
政府・組織はどう動いたのか
- 共同宣言の改定で、経済安保・サイバー・AI・半導体・防衛産業を明記
- ACSA(相互補給)の有効活用を確認し、訓練・洋上行動の機動性を向上
- Quadの海洋・重要鉱物協力をテコに、多国間の冗長性を確保
- 日本の情報保全法で、機微情報の共有・保護の制度基盤を整備
- (報道)CBRN防護分野の連携を模索し、域内の総合抑止を強化
よくある質問(FAQ)
まとめ:宣言から「実装」へ—行動計画の時代
日印は、海洋・経済・サイバーの三層で連携を本格実装へ。サプライチェーンの再設計と情報保全の両立、AI/半導体の共創、ACSA運用の深化が、次の5年を左右します。関係者は「鉱物→材料→装置→設計→人材」のボトルネック地図を今すぐ更新してください。