ノースサファリサッポロは、動物との近距離でのふれあい体験で注目されてきた動物園ですが、札幌市の許可を得ずに長年運営されてきたことが問題視されてきました。
ついに札幌市は立ち入り検査を実施し、その実態と今後の課題が明らかになりました。
この記事では、動物の搬出状況や法的背景、市の見解、残された課題について整理し、なぜこの問題が社会的関心を集めているのかを深掘りします。
札幌市が初の立ち入りを実施

長年続いてきた無許可運営の現実
ノースサファリサッポロは札幌市南区の市街化調整区域に位置しており、施設の開設には本来、都市計画法に基づく札幌市の許可が必要です。
しかし運営会社サクセス観光が開園したのは2004年であり、これまでに必要な許可は得られていませんでした。
札幌市は繰り返し是正を求める行政指導を行ってきたものの、施設側が営業を継続してきたことで、事態は長期化していました。
2025年4月23日、札幌市保健所動物愛護管理センターがついに施設に立ち入り検査を実施し、法令順守状況や動物の健康状態などを確認しました。
立ち入りの実施は施設の運営実態に対する市の対応として大きな転換点となりました。
無許可営業の継続と補助金支給の背景
ノースサファリサッポロが無許可で営業を続けてこられた理由には、運営側と行政双方の問題が複合的に存在します。
施設は市街化調整区域にありながら都市計画法に基づく許可を取得せずに開業しました。
札幌市は開園前から違法建築を認識しており、以後も再三にわたる指導や勧告を実施しましたが、運営会社は応じることなく営業を続行しました。
行政側も、実効性のある強制措置を講じなかったため、違法状態は約20年間継続しました。
運営会社の代表も「建築許可について甘く見ていた」と述べており、違法性への認識が不十分だったことが明らかになっています。
専門家からは行政の対応の遅れを問題視する声も上がっています。
さらに、同施設には国や地方自治体から合計で9379万円の補助金が支給されていたことが判明しました。
北海道は補助金の支給時に無許可である事実を把握していなかったと釈明し、手続き上の不備はなかったとの見解を示しました。
鈴木直道知事は記者会見で「制度に基づき適切に支給された」と説明し、中小企業庁や札幌市も同様の認識を示しています。
こうした状況は、施設が法的な許可を得ていない場合でも補助金が支給され得る現行制度の課題を浮き彫りにしています。
制度の透明性や補助金審査体制の実効性に対する信頼を損なわないためにも、今後は補助制度全体の見直しが必要とされています。
飼育されている動物は640匹
施設内では哺乳類、鳥類、爬虫類など多様な種類の動物が飼育されており、その数は約640匹にのぼります。
特定動物に指定されているライオンやオオカミも含まれており、通常の動物園とは異なる高い管理基準が必要とされます。
一部の動物は来園者との直接接触が可能であり、感染症リスクや動物のストレスなどが懸念されてきました。
今回の立ち入りでは飼育環境において法令違反は確認されませんでしたが、札幌市は今後の運営と搬出に関する詳細な計画を求めています。
動物の搬出状況と今後の計画

閉園に向けた段階的な搬出が進行中
運営会社は2025年3月に、同年9月末での閉園を発表しました。
すでに動物の一部は他施設へと搬出が始まっており、3月末までに210匹が移送されています。
主にモルモットやシマリス、メンフクロウ、ケヅメリクガメなどの比較的管理しやすい種類が対象でした。
今後も段階的に搬出が進められる予定であり、9月末までにはさらに72匹の動物が移送される見通しです。
搬出先となる動物園や保護施設との調整は続いており、運営側は時間をかけて動物たちを安全に移送する方針です。
特定動物の搬出には課題が山積
特定動物として指定されるライオンやオオカミ、ベンガルトラなどの猛獣については、搬出先の確保や輸送方法において多くの課題が残されています。
札幌市は、特定動物が社会に及ぼすリスクを考慮し、安全かつ慎重な対応を要請しています。
これらの動物は、受け入れ可能な施設の条件も厳しく、輸送中の事故防止対策や輸送後の飼育環境の整備など、包括的な搬出計画が必要です。
現在、特定動物を含むおよそ300匹以上の動物に関しては、具体的な搬出日程が決まっていません。
市の見解とこれまでの対応

慎重かつ早急な対応を要請
立ち入り検査を実施した札幌市保健所動物愛護管理センターの千葉司所長は、搬出を早急に進める必要がある一方で、動物の安全を最優先にするよう運営会社に要請しました。
特に特定動物はストレスに敏感であり、無理な搬出は動物にも周囲にもリスクをもたらすため、専門的な判断が求められます。
札幌市は今回の立ち入りを契機に、同様の違法運営事例が存在しないかを市内全体で点検する方針です。
また、再発防止策として許可が必要な施設については、審査体制の見直しや事前指導の強化を検討しています。
法令違反の明確化と是正措置
札幌市によると、現在の時点では飼育状況に関して明確な法令違反は確認されていません。
しかし、施設そのものが無許可で建設されていること自体が都市計画法に抵触する行為であり、市は早急に是正措置を取るよう運営会社に強く求めています。
さらに市は、今後の施設閉鎖に向けての手続きに関しても詳細なスケジュールの提出を運営側に求めており、その実行状況については継続的に監視を行っていく方針です。
閉園後の対応と課題

飼育管理体制の維持が重要
閉園までの間、動物の飼育や管理を安定的に続ける体制の維持が課題です。
施設では飼育員の確保やえさの調達、施設設備の安全確保などが求められており、搬出が完了するまでは日常の業務に加えた高度な運営管理が必要となります。
また、万一災害が発生した場合や動物が逃げ出す事態が起きた場合の対応マニュアルも、市と運営会社で共有し再確認する必要があります。
閉園後の土地利用と地域への影響
施設の閉園後、その敷地をどのように活用するかは、札幌市としても検討課題となっています。
市街化調整区域における用途制限を守りながらも、地域社会にとって有益な活用方法を見出すことが求められます。
地元住民の中には、自然環境への影響や将来の治安悪化を懸念する声もあります。
そのため、行政と地域住民との合意形成を重視しながら、適切な土地活用の道筋を示すことが必要です。
まとめ
- ノースサファリサッポロは、無許可で開設された動物園です。
- 札幌市は2025年4月に、初の立ち入り検査を実施しました。
- 飼育動物は約640匹で300匹以上は、搬出予定未定です。
- 特定動物の扱いには、高い安全性と専門性が必要です。
- 市は再発防止と、閉園後の土地利用の議論を進めています。
- 運営会社には詳細な搬出計画の提出が求められています。