2025年11月19日、警視庁捜査2課が東京大学医学部附属病院の准教授を収賄容疑で逮捕しました。医療機器メーカーから「奨学寄付金」名目で約300万円を受け取り、そのうち約150万円を私的に流用していたとされています。エリート街道を歩んできた医師がなぜこのような不正に手を染めたのでしょうか。医療現場における寄付金制度の問題点とともに、事件の全容を詳しく見ていきます。あなたも医療機関の透明性について疑問に思ったことはありませんか?
事件の概要:何が起きたか
2025年11月19日、警視庁捜査2課は東京大学医学部附属病院の救急・集中治療科に所属する准教授(53歳)を収賄容疑で逮捕しました。同時に、東証プライム上場の医療機器メーカー「日本エム・ディ・エム」の元営業所長(41歳)も贈賄容疑で逮捕されています。
逮捕容疑は、2021年9月と2023年1月の2回にわたり、医療機器メーカー側に東大病院の口座を伝えて計80万円を振り込ませ、約70万円を不正に受け取ったというものです。准教授は整形外科の外傷診療チーフを務めており、医療機器を選定する権限を持っていました。
事件の要点
- 逮捕された准教授は東大病院で主に大腿骨の手術を担当
- 2019年春頃から医療機器メーカーと癒着関係が始まる
- 2016年12月から2023年1月まで5社から計約350万円の寄付金
- 約300万円を受け取り、うち約150万円を私的流用
- 私用パソコン、タブレット、イヤホンなど20点を購入
- 焼肉接待やゴルフ接待も受けていた疑い
発生の背景・原因
この不正の背景には、医療機関における「奨学寄付金制度」の構造的な問題があります。奨学寄付金は本来、医療研究の発展を目的として企業が大学病院などに提供する資金ですが、その使途について大学当局によるチェックが行われないという盲点がありました。
准教授は2019年春頃から医療機器メーカーの営業を受け、半年後には同社の大腿骨用インプラントを優先的に使用するようになりました。その見返りとして「奨学寄付金」名目で賄賂を受け取る構図が成立していたのです。
寄付金は東大病院の取り分を除いた約85%が寄付先である医師に配分される仕組みとなっており、この配分金の使途が事実上、医師の裁量に委ねられていたことが不正を可能にしました。本来は研究資金に充てられるべき寄付金が、個人的な支出に流用されていた実態が明らかになっています。
関係者の動向・コメント
逮捕された准教授は、私立男子御三家の一角である武蔵高校から東京大学医学部へと進学し、1997年3月に卒業したエリート医師です。同年4月に医師国家試験に合格後、すぐに東大病院に採用され、関連病院への出向を経て2007年に東大病院に戻り、18年にわたって実績を積んできました。
東大病院関係者によると、准教授は大学時代に医学部のアメリカンフットボール部で活動し、医師免許取得後も後進の指導に当たっていました。3人の子どもは全員、私立大学の医学部に進学したとされています。
警視庁関係者は「賄賂まみれで、あからさま過ぎる」と憤りを示しており、焼肉接待以外にもゴルフ接待などの癒着があった可能性を指摘しています。一方で、准教授の仕事ぶりは順調で、2024年10月には上皇后美智子さまの大腿骨骨折手術を担当するチームの一員に選ばれていました。
被害状況や金額・規模
今回の事件における金銭的な規模は以下の通りです。
| 項目 | 金額・内容 |
|---|---|
| 寄付金総額 | 約350万円(5社から計10回) |
| 准教授の受取額 | 約300万円 |
| 私的流用額 | 少なくとも約150万円 |
| 逮捕容疑の金額 | 計80万円(約70万円を受領) |
| 接待費用 | 計22万円(焼肉接待) |
| 購入品 | パソコン、タブレット、イヤホンなど20点 |
2016年12月から2023年1月までの約6年間にわたって不正が継続していたことから、私的流用が常態化していたと見られています。大学生協などで購入された私用パソコンや親族へのプレゼント用タブレット、ワイヤレスイヤホンなど20点の購入が確認されており、本来の研究目的とは無関係な支出が行われていました。
行政・警察・病院の対応
警視庁捜査2課は2025年6月に医療機器メーカー「日本エム・ディ・エム」による別の贈賄事件を検挙した際、長野県の総合病院の整形外科医2名への賄賂供与を捜査する過程で、今回の事件の端緒をつかみました。構図は東大病院の事件と同じで、エム社側が医師に賄賄を渡していたことが判明しています。
この情報から准教授による私的流用が常態化している事実を把握し、包囲網を敷いた結果、2025年11月19日の逮捕に至りました。警視庁は寄付金制度を悪用した組織的な不正の可能性も視野に入れて捜査を進めているとみられます。
東京大学医学部附属病院側は事件発覚後、内部調査を進めているものと思われますが、具体的な対応策については現時点で公表されていません。寄付金制度の透明性確保や使途確認の仕組み構築が今後の課題となるでしょう。
専門家の見解や分析
医療ガバナンスの専門家は、今回の事件が「奨学寄付金制度」の構造的な問題を浮き彫りにしたと指摘しています。寄付金の使途について大学当局によるチェック機能が働いていないことが、不正を許す温床となっていました。
特に問題視されているのは、寄付金の約85%が医師個人に配分され、その使途が事実上、医師の裁量に委ねられている点です。本来は研究資金として使われるべき資金が、個人的な消費に流用されても発覚しにくい構造になっていたのです。
また、医療機器メーカーと医師の癒着関係についても、業界全体で見直しが必要だとの声が上がっています。医療機器の選定権限を持つ医師に対して、メーカー側が寄付金や接待を通じて影響力を行使する構図は、医療の公正性を損なう恐れがあります。
SNS・世間の反応
今回の事件に対するSNS上の反応は厳しいものとなっています。「エリート医師でも金銭感覚が狂うのか」「患者の信頼を裏切る行為」といった批判的な意見が多数を占めています。
特に注目を集めているのは、准教授が美智子さまの手術チームに選ばれていたという事実です。「皇室の医療を担当する立場にありながら不正を働いていた」という点に、多くの人が驚きと失望を表明しています。
一方で、「子ども3人を私立医学部に入れる学費負担が背景にあるのでは」という憶測や、「寄付金制度自体に問題がある」という制度批判の声も上がっています。医療機関の透明性向上を求める意見も多く見られました。
今後の見通し・影響
今回の事件は、東京大学医学部附属病院の信頼性に大きな打撃を与える可能性があります。日本を代表する医療機関でこのような不正が発覚したことで、他の大学病院や医療機関でも同様の問題がないか、調査が広がる可能性があります。
警視庁は引き続き捜査を進め、他にも不正受領がなかったか、また他の医師や医療機器メーカーとの間でも同様の癒着がなかったかを調べるとみられます。事件の全容解明には時間がかかる見込みです。
制度面では、奨学寄付金の使途に関する透明性確保や、第三者によるチェック体制の構築が求められるでしょう。医療機器の選定プロセスについても、より公正で透明性の高い仕組みへの改革が必要となります。
准教授個人としては、エリート街道から一転して刑事責任を問われることになり、医師としてのキャリアも事実上終わる可能性が高いと言えます。
よくある質問(FAQ)
Q1: 奨学寄付金制度とは何ですか?
医療研究の発展を目的として、企業が大学病院などに提供する資金です。本来は研究費として使われるべきものですが、使途のチェックが不十分なケースがあります。
Q2: なぜ不正が発覚しにくかったのですか?
寄付金の約85%が医師個人に配分され、その使途について大学当局によるチェックが行われていなかったためです。医師の裁量に委ねられていた点が問題でした。
Q3: 医療機器メーカーとの癒着はどのように始まったのですか?
2019年春頃に医療機器メーカーが営業をかけ、半年後には同社製品を優先的に使用する関係になりました。その見返りとして寄付金名目で賄賂を受け取る構図が成立していました。
Q4: 今後、同様の事件は防げるのでしょうか?
寄付金の使途に関する透明性確保や第三者チェック体制の構築、医療機器選定プロセスの改革などが必要です。制度改革が進めば再発防止につながる可能性があります。
まとめ
東京大学医学部附属病院の准教授が医療機器メーカーから寄付金名目で約300万円を受け取り、そのうち約150万円を私的流用していた事件は、医療機関における奨学寄付金制度の構造的な問題を浮き彫りにしました。
2016年12月から2023年1月までの約6年間にわたって不正が継続していたことから、チェック体制の欠如が長期的な不正を許す温床となっていたことが明らかです。エリート医師でありながら金銭感覚が狂い、美智子さまの手術チームに選ばれた頃が人生の絶頂期だったという皮肉な結末となりました。
今後は寄付金制度の透明性確保や医療機器選定プロセスの改革が求められるとともに、医療機関全体でのガバナンス強化が急務となっています。患者の信頼を守るためにも、医療現場の透明性向上に向けた取り組みが不可欠です。
