概要（何が起きたか）
日本年金機構の障害年金審査で、職員が医師の判定結果を自らの判断で破棄し、別の医師にやり直しを依頼していたことが12月28日に明らかになりました。問題が指摘されたのは、障害年金の「認定調書」に記載された判定結果で、医師の主観が「甘い」または「厳しい」と職員が感じた場合に、密かにシュレッダーで処分していたとされています。
- 職員が医師の正式判定を破棄していた事実が判明。
- 破棄された記録は医師本人にも知らせず再依頼。
- 障害年金の支給可否に影響した可能性。
- 機構は「件数など事実関係を確認中」とコメント。
発生の背景・原因
障害年金審査では、医師が障害の度合いに基づいて支給の可否を決定します。しかし、審査結果には医師の主観が多少関わるため、職員が「妥当でない」と感じるケースがあったとみられます。その際、正規の再審手続きではなく、内部判断で記録を破棄し、別の医師に再判定を依頼する形が常態化していました。
関係者の動向・コメント
年金機構は取材に対し、事実を認めつつも「内部調査を進めており、件数などの具体的な確認中」と回答。厚生労働省関係者も「手続き上、職員に医師判定を破棄する権限はない。重大な手続き違反」と強い懸念を示しています。
被害状況や影響範囲
破棄行為によって、実際に年金を受け取る権利を失った障害者がいる可能性があるとされています。特に重度障害を持つ人の中には「不支給」とされたケースがあり、本来支給対象だったのではないかという疑いも生じています。全国規模で行われていた可能性があり、影響は数百件規模に達するとの見方もあります。
行政・機関の対応
厚生労働省は年金機構に対し、事実関係の早急な報告と再発防止策の提出を指示しました。また、第三者を交えた検証チームを設置し、過去の審査記録の復元・追跡を進める予定です。今後は審査プロセスの透明化と情報公開の改善が求められます。
専門家の見解や分析
社会保障制度に詳しい専門家は「公的年金制度の中でも障害年金は生活に直結する給付。信頼を揺るがす行為であり、再発防止と責任の明確化が不可欠」と指摘。また、「再審査制度を明示せず、内部職員の裁量が大きすぎる構造も問題」と制度設計そのものの見直しを求めています。
SNS・世間の反応
X（旧Twitter）などでは、「命綱を握る人たちがこんなことを」「信頼できる審査体制に戻してほしい」といった怒りや不安の声が相次ぎました。一方で、「医師の判定にも差がある現実をどう管理すべきか」という建設的な議論も広がっています。
今後の見通し・影響
今回の問題は、年金制度全体の公正性と信頼を揺るがすもので、行政手続きの透明化を求める声が強まると見られます。厚労省は今後、障害年金だけでなく、他の年金審査にも同様の問題がないかを点検する方針です。必要に応じて法制度や審査方法の見直しも検討される見通しです。
FAQ
Q1：医師判定を職員が破棄することは合法ですか？
A1：いいえ。医師が記した審査記録を職員が破棄する権限はなく、重大な手続き違反にあたります。
Q2：影響を受けた人は救済されますか？
A2：厚労省が再調査を進め、該当者には再審査や補償措置が行われる可能性があります。
Q3：今後の再発防止策は？
A3：第三者を含む審査体制の透明化、デジタル管理の強化、内部監査体制の見直しが検討されています。
まとめ
日本年金機構による障害年金審査の不正は、単なる内部手続き上の問題にとどまらず、国の社会保障制度の信頼性を根本から揺るがす重大な事件です。本来、障害年金は病気や事故などで働くことが難しい人々の生活を支えるための「最後の砦」であり、その審査が公正・中立でなければ、社会的弱者が制度から取り残される危険性が高まります。今回のように、職員が医師の判定を独断で破棄する行為は、制度の本質を損なうものと言わざるを得ません。
行政や機構には、再発防止はもちろん、過去の審査記録を徹底的に洗い出し、不透明な処理が行われたケースをすべて明らかにする説明責任があります。また、被害を受けた可能性のある申請者への再審査・救済措置も不可欠です。さらに、審査過程を第三者が監視できる仕組みや、医師の判定記録をデジタルで一元管理する仕組みの整備など、抜本的な制度改革も求められます。公正な年金制度を再構築し、「誰もが安心して申請できる社会保障体制」を取り戻すために、いま真剣な改革の姿勢が問われています。
