原子力発電は、脱炭素化を進める上で重要な役割を果たしています。
日本は、エネルギー供給の安定性と環境保護を両立させるため、再び原子力の活用に目を向けています。
本記事では、原子力発電の重要性と、脱炭素化に向けた日本の新たな挑戦や展望について探ります。
原子力発電の重要性
原子力発電は、日本のエネルギー政策において以下の3つの重要な役割を果たしています。
- 電気の安定供給の確保
- 脱炭素社会の実現
- エネルギー供給の自律性向上
これらの役割を踏まえ、日本政府は2030年度の電源構成における原子力比率を20~22%とする目標を掲げています。
新たな挑戦と展望
安全性の向上と再稼働
安全性の確保を最優先事項とし、原子力規制委員会の安全審査に合格し、地元の理解を得た原子炉の再稼働を進めています。
次世代革新炉の開発
新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設に取り組んでいます。具体的には
- 廃炉を決定した原発の敷地内での次世代革新炉への建て替え
- バックエンド問題の進展を踏まえた具体化
- 実証炉開発への政策支援
- 収入安定化に資する制度措置の検討・具体化
研究開発態勢の整備
官民のリソースを結集し、実効的な開発態勢を整備しています。これには以下が含まれます。
- 将来見通しの明確化・共有
- プロジェクトベースでの支援
- 「司令塔」機能の強化
廃炉と再処理の取り組み
使用済燃料再処理機構(NuRO)を中心に、以下の取り組みを進めています。
- 全国の廃炉の総合的調整
- 研究開発や設備調達等の共同実施
- 廃炉に必要な資金管理
国際的な動向との比較
欧米諸国でも、原子力発電の役割が再認識されつつあります。しかし、自由化された電力市場での経済性の課題や、社会からの信頼確保など、共通の課題も存在します。
高温ガス炉の開発状況は?
日本原子力研究開発機構 (JAEA)の取り組み
- 高温工学試験研究炉 (HTTR) を使用して、950°Cでの連続運転を2010年に達成。しかし、その後の成果は限定的。
実証炉の計画
- 2030年代後半に実証炉の運転開始を目指し、2029年からの製作・建設を計画。数兆円の投資が必要。
三菱重工業の役割
- 経済産業省により高温ガス炉開発の中核企業に選定。実証炉の研究開発から建設までを担当し、2030年代の運転開始を目指す。
国際協力
ポーランドとの共同開発
- JAEAとポーランド国立原子力研究センターが基本設計を開始。研究炉は2025年に建設予定。
英国との協力
- JAEAが英国国立原子力研究所と共同で基本設計を進め、2030年代初頭の運転を目指す。
国内スタートアップの動き
- Blossom Energy社が高温ガス炉の商用化を目指しており、2035年に第1号機の運転開始を計画中。
海外の状況
- 中国は2023年12月に実証炉の商業運転を開始。
- 米国では2028年を目指して小型モジュール炉の実証炉を建設中。
高温ガス炉はその安全性や高温熱供給能力から期待されていますが、経済性や信頼性が今後の課題。
また、水素製造への応用も視野に入れつつ、再生可能エネルギーとの経済性比較が重要になるでしょう。
- 原子力発電は脱炭素化に向けた重要な役割を果たす。
- 日本政府は2030年度の原子力比率を20~22%に設定。
- 安全性を重視し、原子炉の再稼働を進めている。
- 使用済燃料の再処理や廃炉に向けた取り組みが進行中。
- 高温ガス炉の研究開発が進められ、経済性や信頼性が今後の課題。