第104回全国高校サッカー選手権の3回戦、東福岡対興国の一戦で起きた疑惑の判定が、ネット上で大きな波紋を広げています。特に注目されているのは、後半ATに興国が同点に追いついたシーン。ゴールラインの外からピッチ内に戻ってプレーした選手がオフサイドではないか、という指摘です。
平岡監督も「確認はして欲しかった」と述べるなど、映像を見る限りでは判定に疑問が残る形となりました。果たして、現在の競技規則に照らし合わせるとあのプレーはどう解釈されるべきだったのでしょうか。専門的な視点から、あの「空白の数秒間」を徹底的に検証します。あなたはあの映像を見て、どう判断しますか?
検証のポイント
- 競技規則第11条「オフサイド」におけるフィールド外の選手の扱い
- パスが出た瞬間のFW笹選手の立ち位置とピッチ復帰のタイミング
- なぜ副審はフラッグを上げられなかったのか、審判の死角を分析
- Jリーグとの比較:VARがあれば「100%」覆っていた可能性
1. 映像検証:東福岡が失点した瞬間に何が起きたのか
問題のシーンは、興国のFW笹銀志選手が右サイドを突破し、クロスを上げた直後に始まります。笹選手はクロスを上げた勢いでゴールラインの外(ピッチ外)に出ました。その後、中に入れられたボールをFW徳原選手が折り返し、そこへライン外から戻ってきた笹選手が合わせてゴールを決めました。
焦点は、「徳原選手が頭で折り返した瞬間、笹選手はどこにいたか」です。リプレイでは、笹選手はゴールラインより後ろにおり、GKよりもゴールに近い位置にいました。これはオフサイドポジションの定義に合致する可能性が極めて高いものです。
2. 競技規則から見る「フィールド外の選手」の扱い
サッカー競技規則第11条では、オフサイドについて以下のように定められています。
守備側の競技者が主審の許可なくフィールドから出た場合、オフサイドの判断においては、次にプレーが停止するまで、または守備側チームがセンターラインに向かってボールをプレーし、自分たちのペナルティーエリアの外に出るまで、その競技者はゴールラインまたはタッチライン上にいるものとみなされる。
これは攻撃側にも準用されます。つまり、勢い余って外に出た笹選手は、「ゴールライン上にいる」と判定されるべきでした。折り返しの瞬間にボールより前にいれば、当然オフサイドとなります。このルールに照らせば、東福岡の抗議には十分な正当性があったと言えます。
3. 元プロ審判や専門家の見解:なぜ見逃されたのか
SNSやメディアで意見を述べる元プロ審判員たちの多くは、「非常に難しい判断だが、オフサイドであるべきだった」と指摘しています。では、なぜ現場の審判団は見逃したのでしょうか。
一つの要因として、「副審のポジショニング」が挙げられます。副審はオフサイドライン(最後から2人目の守備者、またはボール)を監視していますが、ハイスピードな展開の中で、一度外に出た選手がどのタイミングで戻ってきたかを正確に把握するのは困難です。特に駒沢のピッチレベルでは、視覚的な重なり(パララックス)により、ライン上にいるように見えた可能性も否定できません。
4. 実況的描写:電光掲示板に映し出された真実
判定が下された直後、駒沢陸上競技場の大型ビジョンにはそのシーンが繰り返し流れました。スタジアムの観客からは「ああ、出てる……」「オフサイドだろ」という溜息とどよめきが漏れました。東福岡の控え選手やスタッフが指を差して抗議する中、無情にも試合は再開へと向かいました。
平岡監督が「電光掲示板では(ラインを)割っていた」と語った通り、皮肉にも最新のテクノロジー(大型ビジョン)が、審判の判定が誤っている可能性を会場全体に突きつける形となってしまったのです。
5. 平岡監督のコメント再考:審判への配慮と本音
平岡監督は「確認作業はして欲しかった」と強調しました。これは、「判定を覆せ」という怒りよりも、「副審と主審がしっかりとコミュニケーションを取り、疑わしい点を確認するプロセスを踏んで欲しかった」という現場の切実な願いです。
「これもサッカー」という言葉は、誤審も含めて競技の一部であるという伝統的な価値観を示していますが、選手の努力が報われない結末に対して、指導者として精一杯の異議申し立てだったと受け取れます。
6. SNSとメディアの議論:VAR導入は時期尚早か?
「高校サッカーにVARを」という声は年々高まっています。今回の東福岡のケースは、その議論に火を注ぐ形となりました。
- 導入賛成派:一生に一度の晴れ舞台。明らかな誤審で負けるのは残酷すぎる。
- 導入慎重派:莫大なコストがかかる。全都道府県の予選から導入するのは不可能で、公平性を欠く。
今回の事案を受けて、例えば「準々決勝以降のみ導入」や「簡易的なビデオ判定(iPad等を用いた検証)」など、新しい形での模索が始まろうとしています。
7. 今後の展望:判定問題がサッカー界に与える影響
今回の判定は、単なる一試合の結果に留まらず、今後の高校サッカーにおける審判技術の向上や、テクノロジー導入の議論に大きな影響を与えるでしょう。東福岡という全国的な注目校で起きたからこそ、日本サッカー協会(JFA)もルールの周知や審判研修の強化に乗り出すことが予想されます。
8. FAQ:今回の疑惑判定に関するQ&A
Q:審判が後から誤審を認めた場合、試合結果は変わりますか?
A:原則として、一度確定した試合結果が判定ミスを理由に覆ることはありません。記録上は興国の勝利として残ります。
Q:平岡監督はなぜもっと激しく抗議しなかったのですか?
A:高校サッカーの指導者には高い教育的配慮が求められます。審判への過度な抗議は警告の対象になるだけでなく、選手たちに「負けを環境のせいにする」マインドセットを与えかねないため、抑制的な対応を取ったと考えられます。
9. まとめ
東福岡を襲った今回の判定は、競技規則に照らせば「オフサイド」である可能性が極めて高いものでした。平岡監督の「確認して欲しかった」という言葉は、今後の大会運営における重い課題を投げかけています。
しかし、判定の不運を言い訳にせず、自らのプレーを省みた選手たちの姿こそが、高校サッカーの美しさでもあります。この議論が、より公平で素晴らしい競技環境の構築に繋がることを願って止みません。

